災害補償制度
地方公務員災害補償法(以下「法」という)に定める職員が、公務や通勤により負傷したり疾病にかかったりした場合には、地方公務員災害補償基金が各種の補償を実施することになっています。
基金とは、法に基づき、地方公共団体に代わって補償を行う機関として設立された法人で、本部が東京に、支部が各都道府県及び政令指定都市に置かれています。
大阪市支部は大阪市人事室人事課(厚生グループ)内に置かれ、公務災害又は通勤災害であるかどうかの認定や、各種の補償などを行っています。
補償の範囲は、負傷・疾病・障害又は死亡などの身体上の損害に限られ、物的な損害(衣服や眼鏡など)や精神的損害(慰謝料)は含まれません。
公務災害とは…
仕事中にけがをした場合や、仕事が原因で病気になった場合は、一般的に公務災害として取り扱われますが、勤務時間中に発生した災害がすべて公務災害と認められるわけではありません。
負傷
公務中の負傷は、私的行為によるもの、故意又は本人の素因(私病)によるもの、偶発的な事故や私的怨恨によるもの、天災地変によるものなどを除き、原則として公務災害となります。
疾病
疾病が公務災害と認められるのは、公務と相当因果関係をもって発症した(医学的に明らかに認められる)場合に限られます。
通勤災害とは…
勤務のため、住居と勤務場所との間を、合理的な経路及び方法により往復している途中で発生した災害は通勤災害として取り扱われます。
しかし、現実の通勤においては、途中で私用を弁じたりすることがあります。通勤とは関係のない目的で通勤経路からそれることを逸脱といい、経路上で通勤とは関係ない行為を行うことを中断といいます。これらの場合には、その時点で通勤行為は終わったものと考えられるので、当該逸脱・中断の間及びそれ以後の経路上での災害は通勤災害とは認められなくなります。
しかし、その逸脱・中断が、日常生活上必要な行為であって総務省令で定めるものをやむを得ない事由により行う最小限度のものであるときは、その逸脱・中断を終えて、もとの経路に戻った後の災害は通勤災害と認められます。
第三者の行為による災害のとき
「通勤途上で交通事故に遭い負傷した」、「公用外出中に飼い犬にかまれた」などの場合で、それが第三者の不法行為によって発生した災害を第三者行為災害といいます。
第三者
第三者とは、被災職員が被った災害に関して民事上の損害賠償責任がある者をいいます。
例えば、交通事故の相手方(直接の加害者や加害者が加入している保険会社など)や、犬の飼い主、会社の使用主などの管理・監督責任者があげられ、被災職員の所属する地方公共団体及び基金は、ここでいう第三者にあたりません。
《注》ここでいう「交通事故」には、自動車やバイクによる事故だけでなく、自転車や歩行者との衝突などによる事故も含みます。
損害賠償と補償
第三者行為災害の場合、被災職員は、基金に対して補償の請求ができるとともに、第三者に対しても、民法等の法律に基づき損害賠償の請求ができます。
しかしながら、被災職員が補償と同一の事由による損害賠償をそれぞれから二重に受け取ることはできません。
そのため補償を受ける方法として、被災職員は、原則として賠償責任を負う第三者に対して損害賠償請求(示談先行)を行う事になりますが、当支部に補償請求(補償先行)を行うこともできます。ただし基金の補償対象でない慰謝料(精神的損害)や物的損害については、被災職員自らが第三者と交渉し解決する必要がありますのでご注意ください。
示談先行
示談先行とは、被災職員が第三者から損害賠償を受けた後に基金に補償を請求することをいい、補償の事由と同一の事由について損害賠償を受けている場合、基金は、既に損害補填された金額について補償を行わないことになります。
補償先行
補償先行とは、被災職員が第三者から損害賠償を受ける前に、基金から補償を受けることをいいます。基金としては、本来、損害賠償しなければならない第三者に代わって損害補填を行っており、いわゆる立替払いをしたことになります。
そのため、基金は補償した額を限度として、被災職員が第三者に対して有する損害賠償請求権を代わりに取得することとなります。
したがって、基金から補償があるからといって、基金の了承なしに示談し、損害賠償請求権を放棄することはできません。基金の了承なく示談した場合は、補償が受けられない場合があるので注意してください。
《注》「損害賠償請求権の取得」の範囲について
療養補償(治療費)や休業補償(休業損害)、並びに障害補償等のうち、基金が補償した金額について基金が損害賠償請求権を取得するのであって、基金が補償しない物的損害や慰謝料については、直接第三者に請求することになります。
なお、慰謝料の請求についても、できるだけ基金から第三者への請求と併せて行うよう、所属担当者及び基金支部と十分に連絡をとってください。
第三者行為災害発生
第三者行為災害発生時
第三者の下記事項を確認してください。
- 住所、氏名、年齢、職業、電話番号
- 勤務先の名称、住所、代表者
- 業務中かどうか
- その他(親権者など)
《交通事故の場合》
- 第三者の保険(自賠責保険、任意保険)加入の確認
- 「交通事故証明書」(自動車安全運転センター)の取寄せ
※自転車事故等の小さな事故であっても、第三者が関係する事故の場合は、すぐに警察へ届出をしてください。
先に第三者より損害賠償を受けるよう交渉し(示談先行)、それが困難であれば基金の補償を受けるよう(補償先行)手続きを行います。
- 【注1】
- 第三者の所在や連絡先は絶えず把握しておいてください。
- 【注2】
- 第三者との交渉などについては、所属及び当支部と十分に連絡を取り、示談を結ぶ前(示談書に印鑑を押す前)には示談書(案)の写しを所属を通し当支部に提出してください。
- 【注3】
- 示談書を作成するときは、補償の種類ごとに賠償金額を明記するようにしてください。
定期的に、被災職員の所属を通じて、第三者行為災害事案の処理状況を当支部へ報告していただきます。
示談が成立し事案が完結した場合は、完結の報告をしていただきます。
- 【注4】
- 個人(被災職員本人)が加入している傷害保険等があれば、当支部への報告が必要となります。
どんな補償が受けられるか
公務上の災害又は通勤による災害と認められると、次のような補償や福祉事業を受けることができます。
種別 | 内容 |
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療養補償 | 治療が必要な場合、治ゆ(症状固定)するまでの期間に医師の診療などの必要な療養を受けられます。
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休業補償 | 療養のため勤務ができず、給与を受けない期間支給されます。 |
傷病補償 | 療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治ゆ(症状固定)せず、その状態が地方公務員災害補償法施行規則(以下「規則」という)別表第2に定める等級に該当する場合に、年金が支給されます。 |
障害補償 | 傷病が治ゆ(症状固定)した時、規則別表第3に定める程度の障害が残った場合に、年金又は一時金が支給されます。
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介護補償 | 傷病等級第2級以上の傷病補償年金又は障害等級第2級以上の障害補償年金の受給権者で、常時又は随時介護を受けている場合に支給されます。 |
遺族補償 | 公務又は通勤により死亡した場合には、法で定められた遺族に対し、年金又は一時金が支給されます。 |
葬祭補償 | 公務又は通勤により死亡した職員の葬祭を行なった遺族等に対して支給されます。 |
福祉事業 | 被災職員の円滑な社会復帰を促進するため、又は被災職員及びその遺族の援護を図るために、必要に応じて講じられる施策及び措置をいいます。
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